【第6回】オリンピックから感じる仕事を前に進めるために大切な「2つ」のこと=濱潟好古

【第6回】オリンピックから感じる仕事を前に進めるために大切な「2つ」のこと=濱潟好古

 2月9日に開催された平昌オリンピックもいよいよ大詰めになってきた。本コラムは2月16日(金)の早朝05:00に書いている。現在の日本人選手のメダル獲得状況は、銀メダルが4つ、銅メダルが3つだ。

まだまだ、目玉競技は残っている。ちなみに2月16日(金)本日は男子フィギュアスケートのショートプログラムが行われる。大会前に怪我をして思うような滑りができなかった羽生結弦選手には多いに期待している。そして、スキージャンプラージヒルの個人予選もある。ノーマルヒルでは思うようなジャンプができなかったレジェンド葛西紀明選手も楽しみでしょうがない。

 もちろん、一日本国民として金メダルをとってもらいたいという思いは常にある。応援しているからしょうがない。ただ、オリンピックとは不思議なもので、仮にメダル獲得を期待されつつ、獲得できなかったとしても一生懸命がんばった選手をディスる日本人はほとんどいない。一部の顔を出さない心無いネットユーザーは別だが・・・

 この現象が顕著だったのが、平昌オリンピックの前に開催されたソチ五輪での元日本代表のフィギュアスケーターの浅田真央選手ではないだろうか。通称「マオちゃん」。メダルを期待されつつ、ショートプログラムで転倒を繰り返しまさかの16位に終わる。演技後のインタビューでは「何も分からない」と方針状態。フィギュアスケートの良さをよく理解せずに見ていた筆者ですら「マオちゃん」が心配になった。もはや8歳下の妹を心配するお兄ちゃん感覚だ。翌日に行われたフリースケーティングでは見事に挽回するものの前日のショートプログラムが響きメダル獲得はならなかった。それでも、感無量の表情で、涙をうっすら浮かべながら、歓声に対して笑顔で手を振りながらリンクを去っていく演技後の「マオちゃん」の姿に涙した。悔し涙ではない。感動から生まれる涙だ。全国の「マオちゃん」を応援する国民の心を掴んだことは言うまでもない。

 なぜ、ここまで感動したのかを自分なりに分析した。

 夏季、冬季と4年に1度のサイクルで行われるオリンピック。選手たちは代表に選ばれるかどうかも分からない、自分で開催場所を決めることもできない。そんな中、4年間、選ばれメダルを獲得するために常人では想像できない努力をする。そして、日の丸を背負い、大会中に最高のアウトプットを出すために、マインド、スキルを究極にまで高める。

 ここで忘れてはいけないのが、コーチの存在だ。選手は1人でひたすらがんばるのではなくコーチと二人三脚、もしくは複数名のコーチがいる場合は一枚岩のチームとしてオリンピックまでに最高の状況を作り出す。コーチが間違った指導方法をすれば選手たちも伸び悩む。コーチがディスコミュニケーションを行えば選手は力を発揮しづらくなる。選手たちにとってコーチの存在は不可欠といっても過言ではない。

 

 本コラムは「リーダーシップ」「マネジメント」というテーマなので、ここでこの状況を一般ビジネスに置き換えてみる。置き換えるというともはや語弊があるかもしれない。

 一流オリンピック選手たちのこのオリンピックまでの一連の練習の組み立て方や行動に対する考え方は日常のマネジメント手法にも取り入れることができるし、取り入れるべきことだ。

 

 チームをリードする、チームをマネジメントする際で一番大切なことはチームが最終的に生み出す「アウトプット」であることは間違いない。過去のコラムでも何回も出ているが、リーダー、マネージャーの仕事は「メンバーのポテンシャルを最大限に引き出し、メンバーの力を借りて、チームとして最大のアウトプットをだす」ことだ。文字面だけを見ると、こんなことは分かっていると言い出す世のリーダーたちは多いが、理解しているようで実践できているリーダーは思っている以上に少ない。

 職業柄、多くの経営者や中間管理職といったリーダーたちと接する機会が多いがメンバーの力を最大限に発揮させているリーダーはなかなかいない。では、「メンバーの力」とは何だろうか。それは、ずばり「仕事力」だ。これはメンバー1人ひとりの「個の力」と言っても良いかもしれないがビジネスコラムということで「仕事力」で統一する。

 

 メンバーたちの「仕事力」の集合体がチームのアウトプットだ。ではこの「仕事力」を最大限に高めてもらうためにどのようにチームをマネジメントすればよいのだろうか。

 

 前提を伝えると、「気合」や「根性」といった精神論では「仕事力」は身につかない。頭ごなしのトップダウンで「とにかく成果をあげろ」「とにかく売上を上げろ」「とにかく新規開拓をしまくれ」なんてことを言い続けて最高のアウトプットがでるほどマーケットは甘くない。精神論ではなく、結果に至るまでのロジックが本当に大切になる。

 

 まず、仕事には「納期」なるものがある。決められた期限のことだ。営業マンであれば、「いつまでに〇〇円の売上を上げる」ということになる。毎月末までなのか、3月末までなのか、6月末までなのかと指定される期限は企業によって違うが、共通していえることはこの「いつまでに」という考え方だ。成績が低迷している営業マンの多くがこの「期限」に対する意識が異常に低い。システム開発などの案件もそうだ。「いつまでに」どのような成果物を作るのかということをあらかじめ決めてから開発を行わなければそのプロジェクトはカオスと化す。決められた「納期」までに納品できませんでしたなんて言う話になれば最悪訴訟問題にまで発展することすらある。

営業マンやシステムの開発案件だけではない。企業という組織にももちろん決まった「期限」がある。それは決算月だ。決算月までに目標売上を達成しないといけない。「売上を達成していないので決算月を変えます」なんていう社長がいたとしたらその会社は間違いなく倒産する。オリンピックもそうだ。東京オリンピックであれば2020年7月24日開催なので選手たちはこの7月24日までに最高のアウトプットを出せる状況を作り出さなければならない。開催日を無視して練習をするような選手はまず代表選手に選ばれない。

 

次に「アウトプットイメージ」というものがある。読んで字のごとく、最高のアウトプットを出すために事前に掲げる「イメージ」のことだ。

例えば、18時まで(納期)に飛び込み営業で30社の企業から名刺をもらう「仕事」があったとする。出さなくてはいけないアウトプットは「30社から名刺をもらうこと」なので、これを目標として動くことになる。この目標が「アウトプットイメージ」だ。掲げた「アウトプットイメージ」どおりに順調に名刺をもらえれば良いが、もしかしたら30社ではなく20社からしか名刺をもらえないかもしれない。その20社が実際に生まれた「アウトプット」だ。20社からしかもらえなかった理由は、時間の使い方が下手だったからかもしれないし、事前の準備が疎かだったからかもしれないし、自分では正しいと思っていた時間の使い方や準備の方法が間違っていたのかもしれない。いずれにせよ、アウトプットイメージである「30枚の名刺を獲得すること」はできなかった。これが結果だ。

結果はどうあれ、ここで大切な考え方がある。それは決められた18時という「納期」までに「アウトプットの質」を高めるための工夫をどれだけできたかということだ。「30枚獲得」というアウトプットイメージに近づけられるよう「仕事」を進めることができたかどうかといことだ。そして、マネージャーを始めとするリーダーはメンバーにアウトプットの質を高めさせるための行動をどれだけ共に考え、実践させることができたかということだ。オリンピックでいうならば最高のアウトプットイメージは「金メダル獲得」ということになるだろう。コーチは選手に金メダルを獲得させるために練習内容を組み立て、そしてモチベーションを維持させ続け、体調も最高の状況にしなければならない。コーチがこれらのことを怠ると選手も本番で最高のアウトプットを出せないのではないだろうか。

 

仕事力を上げるために大切なことを言語化してみる。

 

それは、「決められた納期までにアウトプットの質を高めるための行動を繰り返し、最高のアウトプットをだす」ことだ。

 

 結果が出た、出なかったで「あーだ、こーだ」というのは二流、三流のリーダーだ。そんなことに時間を使うのではなく、メンバーに「納期」を徹底的に意識させ、そして「アウトプットイメージ」に近づくよう「アウトプットの質」を高める行動を繰り返し行わせてもらいたい。この繰り返しがマネージャーの仕事力を上げるために必要な行動になる。

今回のコラムでは「仕事力」を上げるために必要なことを触りだけご紹介したが、詳しくは拙著「何があっても必ず結果を出す 防衛大式最強の仕事(あさ出版)」に書いてあるので、もしよろしければぜひともお手にとってもらいたい。

 

 2018年2月16日現在、東京オリンピックまで残り889日。

 日の丸を背負ったトップアスリートたちが東京で躍動している姿を楽しみにしている。

濱潟好古

チームマネジメント・人材育成コンサルタント。
株式会社ネクストミッション代表取締役。
1982年福岡県生まれ。防衛大学校卒。厳しい規律、徹底された上下関係に耐えきれず600名中120名の同期が自主退校する中、大学一過酷と言われる短艇委員会に入部し、日本一を2回経験。卒業後、IT系ベンチャー企業に営業職として入社。入社2年目から5年目まで売上№1営業マン。6年目に営業部長就任。防大時代に学んだ経験を元に独自に構築した「防大式マネジメント」を導入したところ、2年間で会社全体の売上を160%アップ、中堅、新人と関係なく、すべての営業マンに目標予算を達成させる。2016年、株式会社ネクストミッションを設立。「今いる社員を一流に」をモットーに中小零細企業の社長、大手生命保険会社のリーダー等に「防大式組織マネジメント」研修を開催している。

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