レジェンド・オンライン – Legend Online – 株式会社レジェンドプロデュース – 経営コラム集 – https://kigyou.biz 小規模企業のための経営コラムコーナー Fri, 20 Sep 2019 09:13:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.25 https://kigyou.biz/wp-content/uploads/2017/12/cropped-LP_LOGO-32x32.png レジェンド・オンライン – Legend Online – 株式会社レジェンドプロデュース – 経営コラム集 – https://kigyou.biz 32 32 【第3回】ライバルより3倍高くても売れる「違いづくり」の発想 https://kigyou.biz/archives/4497 https://kigyou.biz/archives/4497#respond Sun, 10 Jun 2018 16:33:07 +0000 https://kigyou.biz/?p=4497  ライバルより価格が高くても「..

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 ライバルより価格が高くても「こんな安くやっていただいて良いんですか?」と言われる。こんな状況になったらビジネスはとってもやりやすくなりますよね。前回、第2回のテーマは「ライバルと価格で競争してはいけない」でした。では、価格で競争しないために何をすればいいのか?これが今日のテーマです。

 では、一つ質問をします。「あなたの顧客は、あなたの商品のどこに良さを感じて買っているのでしょうか?」少し考えて書き出してみましょう。いかがでしょうか。少し書き出せたでしょうか?この問いかけをすると、よく以下のような回答が返ってきます。

 飲食業であれば「美味しいから」「お店の雰囲気がいいから」。製造業であれば「製品の性能がいいから」「製品の質が高いから」。サービス業であれば、「接客が丁寧だから」「痒い所に手が届くから」。士業やコンサル等の先生業であれば、「腕がいいから」「成果が出るから」いかがでしょうか。自分の回答に近いものがあったでしょうか?

 

 僕はこの回答は、半分正解で、半分不正解だと考えています。ではなぜ、半分不正解なのか。それは、見込み客には常に「認識のずれ」があるからです。大切なのは、「見込み客や顧客は、正しく商品を理解していない」という大前提を押さえておくことなんですね。僕が年末年始に見るテレビ番組に、芸能人の舌(味覚)をチェックする番組があります。安い牛肉と、高級和牛を目隠して食べて、どっちが高級品かを充てるゲームで、「グルメ」と呼ばれている芸能人が、安い牛肉の方を選んだりしているシーンを見かけます。

 この光景こそ、商品開発の原則を表しているものです。つまり、一部の玄人を除けば、多くの人は味の違いを正しく理解できていないんだということです。「○○産の高級品黒毛和牛です」と書いてあるから、「これは高いものだから、美味しいものだ」と認識をして食べるので「美味しい!!」と言うという人が多いんです。

 製品もサービスも一緒です。本当にその道のプロで性能を認識して製品を買っている人も、正しいサービスを学んで「このホテルのサービスは良い!」と言っている人もほとんどいないはずです。一部の玄人の人を除き、「大半の見込み客や顧客は、正しく商品を理解できていない」わけです。では、見込み客や顧客は何をみて「この商品は良いものだ」と考えているのでしょうか?

 

 シンプルに言うと、言葉や写真を介して人「この商品は良いものだ」と感じています。もちろん、食べてみて美味しかった、私はこれが好き!というものもたくさんありますので、全てそうだと言うつもりはありません。しかし、買う前に購買を決める場合というのは、やはり言葉や写真と言った情報が重要で、特に、言葉をしっかりと使いこなすことが、売れる商品をつくる上での肝になると考えています。

 同業者を見ていて「あの会社の商品は、うちより品質が劣るのになんであんなに売れてるんだ?」と思う事ありませんか?売れている商品は、売れる言葉を使っている。言い換えれば、売れる言葉を使うことができれば、売れる商品が作れるということです。

 こう聞いていると「当たり前じゃないか!」と思う人の方が多いと思いますが、「うちの商品が売れません」「売上が伸びません」という相談を僕が受ける際、大半の経営者さんは、言葉などの見せ方を変える前に、こんなことを考えます。

 「仕入れる商品をもっと良いものに変えようと思います」「今度は、この資格を取得しようと思います」「もっとこんなサービスも追加したら売れますかね?」などなど、商品の中身の変更を考えています。または、「ホームページを作り変えようと思っています」「最近はやりのLINE@ってどう思いますか?」「広告ってどうやって運用したらいいですか?」などと、集客の手段の問題と捉えているケースも多くあります。

 しかし、そういったクライアントさんの現状把握をすると、98%以上のクライアントさんは「見せ方」が不十分なので、まずはそこから改善し、その後に集客や商品の中身の変更を考えていってもらっています。もともと良いものをもっている会社さんであれば、この言葉を変えるだけで売上が伸びるというのは、よくある話で、つい2週間前にも、商品を変えずに言葉を変えただけで2ヶ月で売上が4倍に伸びた事例もありました。

 

 売上を上げるのも、単価を上げるのも、どちらも言葉を使っていくというところまではOKとして、では、次は、今日のテーマに上げた、ライバルより3倍高くても売れる「違いづくり」について考えていきます。僕は商品企画をする際は、いつも「3倍価値の法則」をクライアントさんにお伝えしています。つまり、提供価格の3倍の価値を感じたら、買う側は「安い!」と感じる心理の事です。10万円の商品を安いと思われるには、30万円以上の価値を感じてもらう。買う側がこれだけの価値を感じられるように、見せ方を捉えていくのが重要です。

 では、ここで言う「価値」とは何でしょうか?僕の定義は「未来」です。お客様というのは、商品を買うことによって、買う前の現状にはない、新しい未来を手に入れたいと考えています。食事であれば、お腹が空いた状況から、お腹も心も満たされた未来を手に入れるために、おしゃれなお店に行ったりしますね。ダイエットであれば、太っている現状から、スリムになった未来を手に入れたいと考え買うものです。

 ちなみに、僕は、1年前から筋膜リリースという施術を受けるために、2週に1回のペースで通っています。1回、1万8,000円の施術に月に2回行くわけですから、僕は筋膜リリースに1ヶ月、36,000円ものお金を払っています。この話をすると「贅沢ですね」「さすが社長さんですね」と言われますが、別に僕は贅沢をするために通っているわけではないんですね。そうではなく、筋膜リリースに通った後の未来を買っているからです。

 1年ほど前の僕は、肩こりや腰痛がひどく、仕事に集中できなかったり、腰が痛くて朝起き上がれないという状況でした。しかし、この筋膜リリースに出会ってからは、2週間のうちに肩こりや腰痛で仕事に支障を出すことが無くなり、常にいい状態で仕事に向かえるようになったんですね。では、肩こりや、それから来る頭痛で仕事のパフォーマンスが下がり、ずっと首を気にしながら頭痛薬を飲みながらなんとか仕事をこなしている状態や、朝起き上がれない状態が解消し、常に仕事に集中できる未来が手に入るとしたら、その価値はいくらでしょうか?

 僕たち経営者は、自分自身の生産性が会社の業績や売上に直結する存在だからこそ、僕にとってこの筋膜リリースに通って、いい状態で仕事ができる価値は、月10万円以上のものがあります。だからこそ、僕はオトクだと思っていますし、これからも、ベストコンディションでベストパフォーマンスを出し続けるために通い続けようと考えています。このように、顧客が3倍価値を感じることは、リピート客を作るためにも重要な発想です。

 

 もう一つ、最後にお伝えしたいのは、同様の「商品の3倍価値を、ライバルとの比較の中でも表現する」ということ。あなたの同業者が、1万円で商品を打っていて、あなたが3万円で商品を売りたい場合、そこには2万円の価格差というものが発生します。ということは、この2万円の差を「お得」と思わせるという発想に立ち、2万円の3倍価値、つまり、6万円以上の価値の差を、ライバルとの間で表現できれば売れるということです。

 「こんな価値あるものを、この価格で提供してくれるんですか?」と言っていただくためには、この価値の差というものを意識してきましょう。なお、筋膜リリースの事例でお伝えしたような、商品そのものに対しての価値を「絶対価値」といい、ライバルとの比較の上での価値を「相対価値」と表現します。

 この絶対価値と相対価値、両方において価値の優位性が伝われば、魅力的になりますので、ぜひ一度、ご自身の商品の価値を、この2つで考え他では得られない価値の言語化を行ってみてください!

本日は以上です。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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【第2回】小規模企業が低価格競争をしてはいけない、5つの理由 https://kigyou.biz/archives/4492 https://kigyou.biz/archives/4492#respond Sun, 27 May 2018 08:03:02 +0000 https://kigyou.biz/?p=4492   「本当に価格って..

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「本当に価格って上げないとダメですか?」

つい先日、こんな相談をもらいました。

 

「低価格で売れるなら、今はこのままビジネスを続けていけばいいと思っています。もう少し実績を積んで、顧客からの評価をもらってから価格を上げるのではだめなのでしょうか。」

というものです。

 

どうしてもビジネスをしていると同業者の価格は気になりますし、ましてや強力なライバルが安い価格で売っていたら、どうしてもそこに価格を合わせたくなりますよね。

 

特に新製品を世に出すときは、まだ実績が少ないからという理由で価格を同業者と同じかそれ以下で販売するケースが多いと思います。中には、本来売りたい価格の半値以下の特化を提示してほぼ利益が出ない状態で売っているケースも見かけます。

 

低価格戦略は販売戦略としてはシンプルで導入もしやすいですし、また客数という結果が出やすいので多くの企業が採用しています。

 

 

しかし、低価格戦略は使いすぎると逆効果になると考えています。そのため、僕はいつも、小規模企業ほど低価格でビジネスをやってはいけないとお伝えしています。

 

なぜでしょうか?

 

小規模企業は価格競争以外で勝負をすべき理由として僕はいつも次の5つの理由があるとクライアントさんにお伝えしています。僕はこれを「低価格スパイラル」と呼んでここから脱出するビジネスモデルの構築をご支援しています。

 

では、1つずつ見ていきましょう。

 

 

 

理由1:自社に顧客がつかない

 

価格を下げたら買ってくださった顧客の多くは、あなたの会社に顧客がついたのではありません。自社に顧客がついたのではなく、価格に顧客がついています。そのため、あなたが値上げすれば顧客は離れますし、ライバルが値下げをしたら乗り換えられます。

 

よく、「近隣にライバルが出店してきたら顧客を奪われた」という話を聞きますが、顧客を奪われた本質的な原因は、「顧客が価格についているから」だと僕は考えています。

 

 

「安いから、あなたの会社にお願いするよ」という状況では、いつまで経っても価格による顧客の奪い合いが起こります。

 

そうではなく、「他ではなく、あなたの会社にお願いしたい」と言われる状況。つまり顧客があなたの会社や商品に価値を感じ、「ファン」になっている状態です。

 

これは、予約3ヶ月待ちの飲食店や、カリスマ美容師を見るとイメージがつきやすいのではないでしょうか。

 

なぜ、わざわざ3ヶ月も先までまってご飯を食べたいのか。

なぜ、通常よりも2倍以上高いにも関わらず、カリスマ美容師には行列が並ぶのか。

この顧客心理を考えてみましょう。

 

確かに料理がおいしいとか、技術があるといった「ウデ」があるとは思いますが、世の中にはウデがいいのに行列になっていないお店もたくさんあります。ここで1つだけ言えるのは、行列が絶えないのは「他の美容師ではなく、あなたにカットをして欲しい」と思われているか。という点です。

 

顧客をファンに変えることができれば、価格が変わってもお客様がつくという状況になる。この視点で、商品やサービス・スタッフ教育などのビジネスモデルを考えていくことが大切です。

 

 

 

理由2:薄利多売ビジネスに勝てない

 

薄利多売、つまり、大量生産をすることで価格を下げ、資本力と人員数を武器に一気に売っていくことで利益を生み出す。これは大きな会社ができる戦略であり、小規模企業には不向きだと考えています。

 

小規模企業が同じことをやろうとすると薄利で売ることはできますが、客数を伸ばすことが追い付かないケースが多々あります。

 

・一度に大量の商品を販売できないため、客数を増やせない

・対応できる人員が少ないため、お客様から依頼が来ても対応が追い付かない

など売り手側の限界が来てしまいます。

 

 

僕はこれを「薄利少売」、と定義しています。

 

小規模企業は薄利少売になってしまうからこそ、結果的に思うような利益が出せずに経営を圧迫してしまうんですね。

 

ここに陥らないためには、

・薄利からの脱出、つまり商品価格を適正価格に上げる

・少売からの脱出、つまりスタッフの育成など販売力強化を行う

 

この2つの対策がありますが、いずれかの選択をすることが、あなたの会社の利益を上げていくためには必要だと言えます。

 

僕の本業はこの、マーケティングと人材育成を両面から同時アプローチすることなので、通常のコンサルティングの中では両方をサポートしていますが、本コラムではあくまで「商品」というテーマに限定しているので、「薄利からの脱出」を今後も考えていきたいと思います。

 

 

 

理由3:貧乏暇なしビジネスになる

 

薄利多売の弊害の一つに、客数が増えすぎるという問題があります。利益を出すためには多くのお客様を抱えなければならず、結果的に多忙な状態が続いてしまいます。

 

音楽関係のスクールビジネスをやっている経営者のKさんは、1ヶ月の月謝を5,000円で設定していました。話を聞くと同業者も同じような価格で商品を提供しているので、この価格で設定しているとのことだったのですが、同時に「客数が伸びない」という悩みを持っていました。

 

Kさんの理想の売上は月60万円。これを月5,000円の月謝で賄おうとすると120人の顧客数が必要です。これだけの数の会員を集め続けるのも大変ですが、それ以上に、120人の顧客を毎月相手にしようとすると、必然的に朝から晩まで文字通り寝る間もなくビジネスをし続けなければいけません。

 

その結果、どんどんKさん自信は疲弊し、「これじゃ、どこかで雇われてた方が楽なんじゃないか」と思うようになったそうです。僕が起業に向けて準備をしていた時に出会った仲間の中には「もう集客に疲れた…」といって起業を諦めて会社員に戻ってしまった人が多くいらっしゃいました。

 

当時の僕に、もっとウデがあればこういった仲間を救うことができたなと後悔している面もあります。だからこそ、客数を追い続けるビジネスは、経営者が疲弊してしまうので、少ない客数で理想の売上・利益が出るモデルを確立して欲しいと伝え続けています。

 

 

また、仕事が忙しくなれば、目先の仕事にどんどん追われてしまい、

「現状は変えたいです。でも忙しくてそれどころじゃありません…。」

「売上を上げることに集中しないと、今月の支払いができないんです…」

 

と言って、現状を変えるために新たなノウハウを学んだり、長期的な計画を立てたりする余裕すらなくなってしまい、現状維持を続けるしかないのです。

 

 

 

理由4:値上げタイミングを逃す

 

既存顧客に対して価格を下げれるのは喜ばれますが、価格を上げるのは少しエネルギーがいります。

 

僕も以前、相思相愛だと思っていたクライアントさんに対して、値上げの交渉をしたことがありました。その際、社長は「わかりました。いいですよ。」と言ってくださったのですが、それから1ヶ月後、契約を打ち切られてしまいました。おそらく、幹部やその他社員からの反対意見があったのではないかと推測していますが、今でもその当時の僕自身の対応を悔やんでいます。

 

一度価格を決めると顧客には「このサービス内容ならこの価格だ」という「低価格マヒ」の前提が出来上がります。

 

そのため、私たち売り手が「これが、この内容のサービスなら適正価格だ」と思っていたとしても、顧客の頭に出来上がった「相場」を覆すのは大変です。

 

また、多くの場合は値上げをせずに当初からのお客様は、破格の値段と破格の特別サービスでサービスを提供し続けてしまっているケースも少なくありません。

 

そのため、値上げをする際は

・なぜ値上げをするのか

・値上げをする代わりにどんな特典を提供できるか

・値上げする顧客側のメリットは何か

などを考え、丁寧に説明を行っていく必要があります。

 

 

 

理由5:低価格が市場認知になる

 

理由4の「低価格が顧客の相場になる」という話と連動しますが、これは、その後のビジネスにも大きく影響します。起業当時の僕は、今では破格と言える金額でコンサルティンをお受けしていました。そのため、クライアントさんは非常に喜んでくれるため、良い口コミをしてくださいます。

 

「西尾さんのコンサルはイイですよ」

「しかもこの金額で、こんなにやってもらえますよ」

と。

 

褒めてくれ、紹介してくれるのは嬉しいことですが、これでは「安い先生」というイメージがついてしまいます。すると、紹介された人も「このくらいの金額でやってくれる」と思った状態で僕の所に相談に来るため、本来の価格を提示すると「高いですね・・・」と言われて契約が取れませんから、はやり得値で対応せざるを得なくなります。

 

いったん広まった低価格という市場認知を覆すのは大変だからこそ、価格以外で選ばれる状態を作っていかなければならないのです。

 

 

 

いかがでしょうか。

あなたはこの5つの理由で取り上げたような「低価格スパイラル」に陥っていないでしょうか。

 

低価格で売ること = 自社(自分)の価値を低く見せること

 

ですから、ぜひそこから抜け出していってほしいと願っています。

 

 

では、どうやってこの「低価格スパイラル」から脱出していくのか。

 

それは、次回以降のコラムで具体的にお伝えしていきますので、

愉しみにしていてください。

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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【第1回】価格を上げると売れなくなるは、大きな勘違い = 西尾英樹 https://kigyou.biz/archives/4485 https://kigyou.biz/archives/4485#respond Sun, 13 May 2018 15:21:07 +0000 https://kigyou.biz/?p=4485 「同業者より価格を下げないと売..

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「同業者より価格を下げないと売れないんですよ…」

 

売上が上がらないと嘆く社長と話をしていると、こんな言葉をよく聞きます。こんな時、僕はいつも次のように問いかけます。

「本当に価格を下げないと売れないんですか?」

 

すると、「はい、そうです。この前も思い切って値上げをしてみたんですが、やっぱり売れなくなってしまいました…。」などと回答が返ってきます。価格競争ではダメだと思って値上げに踏み切ったものの途端に売れなくなり、やっぱり元の価格に戻す。こんなことってよくありますよね。

 

・高くなったから売れなくなったから、今までの価格を維持しなければいけない

・ライバルと同じ価格かそれ以下にしないと売れない

・生き残るためには価格競争は避けれられない

等々…あなたも価格というものに対してこのような考えを持っていないでしょうか?

 

確かに思い切って価格を上げても売れなかったらショックですし、売上を上げるためには元の価格で売らないと、と思うのは経営者としては当然のことと思います。

 

しかし、僕はこういった、価格を上げると売れないという考えに対して「本質を捉えない感情論ですよ」といつも社長さんに伝えています。なぜでしょうか?

 

 

お客様があなたの商品を買わない時に、「高い」とか「お金が無い」という時、それは本当の買わない理由ではなく、表面的な断り文句だからです。

 

 

僕は現在コンサルティング・デザインの会社を経営していますが、会社員時代は住宅関連の業界で仕事をしていました。

多くの人にとって家は人生で一番高い買い物です。安くても2000万、高いと数億円の買い物ですが、この家が「高い」とか「お金が無い」という理由で売れないシーンを僕は知りません。

 

しかし、家を買う人で「お金はあります!」と言って現金一括払いをする人はほとんどいません。むしろお金が無い中で、ローンを組んで住宅を購入します。そして、そのローンを払うために、年2回の海外旅行を年1回にする、旦那さんのお小遣いを毎月2万円削る等々・・・様々な工夫をして資金の捻出をして住宅を購入していますね。

 

 

あなたも、本当に欲しいものが見つかったとき、どうやったらそれが買えるかを真剣に考えませんか?今月買う予定だったものを来月に回す。クレジットカードを使うなど、買うために様々な方法を模索するはずです。

 

そうなんです。人は高くても欲しいものは買うために工夫をするんです。お金がなくても買うのを諦めきれなかったら、それを何とか手に入れようと工夫をしたり、何かを手放したりするという行動をします。

 

 

では、なぜ人生で一番高い買い物である家が、高くても、いまお金が無くても売れるのに、私たちが扱う商品が「高い」「お金が無い」という理由で売れないのでしょうか?

 

ここに人の購買心理の本質が隠れていると僕は考えています。購買心理の根底には、高いから買わない・お金が無いから買わないという理由はないんです。

 

 

僕が起業家として駆け出しの頃は、このことに全く気付けていませんでした。

見込み客の方は「ちょっと今お金が無いから、払えるようになったら連絡します。」という言葉を鵜呑みにして連絡を待っていました。しかし、これまでの経験上、このような言葉を言い残した方がクライアントととして戻ってきた経験は僕にはありません。

 

この人はきっと高いというだろうから、少し価格を下げて提示しようと思って勝手に低額で売ってしまったお客様から「安くしてくれてありがとうございます。その分成果を出します!」と言ってもらえて、他よりも大きな成果を出したという経験も残念ながらありません。

 

でも当時の僕は「なんであのお客様は連絡をくれないんだろう?忙しいのか?」とか、「もう少ししたら連絡が来るんじゃないかな?焦らせちゃいけないからちゃんと待っていよう」などと素直に考えていました。しかし、待てど暮らせどお客様は来ない…。

 

そんなあるとき、知り合いの経営者さんから「たまにはお茶しようよ」と誘われました。ある異業種交流会で出会った経営者さんでいつも親しく話してくれる方なので好意を持っていた方です。その方と新宿にあるあるラウンジでお会いし「最近はどんな仕事しているの?」なんて話から始まって色々話を聞いてもらったのですが、話の途中からその方の会社の商品の話になり、最終的には100万円をコンサルティング商品の提案をされました。

 

当時の僕は、こういった売り方が世の中にあることも知らなかったのでとっても驚きましたが、同時に、どうやってこの場を離れたらいいのか真剣に考えたんですね。その時に出てきた言葉が「〇〇さんの商品すごく素敵ですね!欲しいんですけど本当にいま運転資金とかも無い状況なので、もう少しだけビジネスが好転したら買わせてもらえませんか?」というお話しをして、その場をやり過ごしたんです。

 

そして、そのラウンジを出てた後「あ、良かった、なんとかあの場を離れることができた…」と思ったと同時に、気付いたでんですね。僕が商談をしていた相手もこんな気持ちだったんじゃないか・・・?と。

 

お金が無かったら相手もそれ以上売り込んで来れないからこそ、断るのには一番使いやすい言葉だったんです。だから、自然にその言葉が出てきたんだなと思いました。

 

あなたも同じように売り込まれて困った経験があると思います。少し思い出してみてください。その時はどんな言葉で断ったでしょうか?

そして、同じような言葉を、自分の見込み客から言われていないでしょうか?

 

 

人は断るときに本音は言わない。

 

本当の買わない理由を実際に売り手に伝える人は滅多にいません。そのため、断り文句の常とう手段として「いまお金が無いから…」などが使われるわけです。

 

 

だからこそ、断り文句を鵜吞みにするのではなく、その裏側を推測する力が必要です。

 

そのため、「高い」「お金が無い」などと言われたら、

「あなたの商品は買いたいと思うほどのものではない」

「あなたの商品は価格に見合ったものではない」

「あなたの商品の価値がわからない」

このような理由が根底にあると想定するのが正しい解釈なわけです。

 

 

だからこそ、ここで一度考えてほしいのは、「見込み客があなたの商品を買わなかった本当の理由は何か?」という点です。

あなたはこの問いに対してぱっと答えることができるでしょうか。ここが答えられないようだと、今後売れる商品を開発するというのは難しいでしょう。

 

もちろん、この答えは1つであるはずがありません。僕はいつもクライアントさんには、最低20個は上げてみましょうという提案をしています。あなた会社の商品を買おうとする人、つまり見込み客と呼ばれる人も様々です。買わない理由は決して一つではないからこそ、様々な可能性を想定しておく必要があります。

 

もちろん、買わなかった人全てが、あなたの会社が追うべき見込み客ではありません。市場浸透率100%の商品なんてあり得ませんから、ここで考えるべきは、あなたの会社がターゲットとしている客層で、本来売れるはずだった見込み客が買わなかった理由です。

 

このポイントはすごく大切で、僕は「商品開発とは、見込み客の買わない理由を無くす行為だ」と定義しています。

 

すごくシンプルな表現をすれば、

「確実に売れる状態=買わない理由が見当たらない状態」という公式です。

 

本来成約になるべき顧客を逃すことが無いように、その退路を断つ。その見込み客にとっての買わない理由が無くなれば、必然的にその商品は買うしかなくなります。

 

あなたの会社の商品を買わない見込み客は、どんな理由で買わないのか?

今回は、この回答について様々な視点から考えてみてください。

 

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【第11回】上原浩治に学ぶ「役割分担」の重要性=濱潟好古 https://kigyou.biz/archives/4474 https://kigyou.biz/archives/4474#respond Sun, 01 Apr 2018 23:00:53 +0000 https://kigyou.biz/?p=4474 「いやぁ、もう便利屋です」 &..

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「いやぁ、もう便利屋です」

 

2018年3月30日に開幕した日本プロ野球。

今年は開幕から阪神対巨人の伝統の一戦というプロ野球ファンとしてはついつい興奮してしまう好カード。

 

そして、開幕2戦目の3月31日、ついにあの「男」が東京ドームに帰ってきた。読売巨人軍背番号11上原浩治。

 

上原の登場と同時に巨人ファンのみならず、阪神ファンまでもが割れんばかりの大歓声。東京ドームが揺れに揺れた。ドームに行けなかったことをここまで残念に思ったことは近年ない。いや残念というレベルではない無念と言った方が良いか。敵味方関係なく雰囲気をここまで変えることができる野球選手は上原くらいしかいないのではないだろうか。

 

上原浩治42歳。高校時代はほぼ無名の選手だった。なんと控え投手だ。ちなみに同級生には後の日本ハムに入団し、メジャーリーガーにもなる建山義紀がいた。将来の夢は体育教師をロックし、夢をかなえるために大阪体育大学への進学を考えるも無残にも不合格という現実。そして浪人することを選ぶ。この選択が彼の人生を変えることになる。

浪人しながらトレーニングに励み、さらには家計への負担を減らすために夜間は道路工事のアルバイトもこなしている。この時点で誰もが上原がこんな選手になるとは思ってないだろう。本人ですら思っていなかったに違いない。

開花するのは大学時代だ。阪神大学リーグで目玉選手として活躍し、第13回インターコンチネンタルカップの決勝では当時国際試合151連勝中だったキューバ相手に勝利投手となる。一般社会に置き換えると、とある保険の新人営業マンが151カ月連続でトップセールスを張り、もはや伝説となっているベテラン営業マンを追い抜く的な感覚だ。

大学卒業後はメジャーリーグか日本の国内リーグかを悩みに悩みぬいた結果、読売巨人軍を逆指名する。ちなみに平成の怪物松坂大輔も同じ年に西武ライオンズからドラフト1位指名を受けている。浪人時代の1年間を忘れないようにと選んだ背番号が「19」というのは有名な話だ。

1年目から文句のつけようのない成績を残す。新人投手としては19年ぶりに20勝を記録し、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振に最高勝率の投手主要4部門を制し、新人王と沢村勝のダブル受賞。自分自身を「雑草」に喩えた「雑草魂」は1999年の流行語大賞に選ばれている。もはや社会現象だった。

日本で数々の実績を残し、2009年には海の向こうのメジャーリーグに挑戦する。中継ぎ、抑え投手として活躍し、2013年には日本人初のワールドシリーズ胴上げ投手にもなっている。

 積み上げた日米通算成績は134勝、128セーブ。もはやレジェンドの域だ。

 

その上原が戻ってきた。

冒頭の「便利屋発言」は日本復帰の初登板でのヒーローインタビュー時にインタビューアーから役割を聞かれたときに上原個人が発したものだ。

かつては、先発にこだわり、外国人相手にも真っ向勝負を挑んだ「雑草」の優等生発言に驚いたと共に感動をおぼえた。

 

本コラムはリーダー、マネジメントといったことをテーマにしている。結論から言うと、自分の「役割」を知っているリーダーは意外に多い。リーダーの「役割」とは「メンバーのポテンシャルを最大限に引き出し、メンバーの力を借りて、チームとして最高のアウトプットを出すことだ」。名プレイヤーだったが、メンバーの力を引き出し、その力を借りることができないリーダーは優秀なリーダーとは言えない。では、メンバーはどうだろうか。チームメンバー全員が自分の役割を言語化することができるチームは少ない。チームメンバーが自分の「役割」を仮に把握していないとしたらそれはリーダーの責任だ。そして、メンバー個々の「役割」があいまいなチームは最高のアウトプットを出すことはできない。

 

私事で恐縮ではあるが、かつて部下の1人に中国籍のJさんがいた。中国の大学を出て日本に留学して4年制の大学を卒業して入社してきた。

非常に頑張り屋であったが、日本語レベルでは他の営業マンにどうしても劣ってしまう。他の営業マンが次々と成約を上げていく中、Jさんはなんかなか成約にまでたどり着くことができない。特にお客様との電話のやり取りを苦手としていた。このままではよくないと思い、Jさんと話し合い、電話がダメならダイレクトメール(以下、DM)を使って営業を行うように指示をだした。

Jさんの中では「自分は頑張っているのに」という自負もあったのだろう。最初はとにかく難色を示した。確かにそう思うのも当然だ。そもそもJさんは、キャリアを成功させようと中国から日本にきている。プライドもあるだろうし、何よりも同僚たちより劣っているという理由でDM営業をやらされると思っていたようだ。

私はJさんと腹を割って話し、DM営業の「目的」「重要性」「必要性」を説明した。DMの先には困っているお客様がいるかもしれない。とても大切な業務であることをJさんに伝えた。

そして何よりも常日頃、気づかいもできるし、細かいところにもよく気づくJさんには適材適所だと思っているという自分の気持ちも伝えた。Jさんは納得したようで、その日からDM営業を行うようになった。

 元々、頑張り屋なので、とにかく夜遅くまで頑張っていた。お客様の反応を見ながらDMの内容も変える。DMの内容に関しても、私に何度も相談があった。JさんのDMに対する熱意は本当にすさまじかった。

 3週間ほど経った頃にJさんが送ったDMに対して反応が出始める。1カ月を経過したころには商談にもつながる。そして、2カ月が過ぎようとする頃にめでたく初成約を上げた。あの時のJさんの喜んでいる顔は忘れない。

 その後はコツをつかんだのか。Jさんは次々と成約を上げていく。いつの間にか単月ではあるが、事業部の中でも1番の成績になっていた。めでたく社内MVPも獲得した。表彰時に役員の一人がJさんに訊ねた。

 

「おめでとう。毎日、DMばかりでしんどかっただろ?よく頑張ったね」

 

Jさんは静かに答えた。

 

「いいえ、1通1通思いを込めて、送った先のお客様の喜ぶ顔を想像しながら送っていました。しんどいことなんて何一つありませんでした。今はこのポジションに感謝しています」

 

 最初は他の同僚たちに劣っているという理由でDM営業をやらされると渋っていたJさんが、こんなことを言ってくれるとは夢にもおもっていなかったのでとてもうれしかった。リーダー冥利に尽きるとはこのことだろう。

 その後、DM部隊の人数は増えて、Jさんを中心とするDM部隊は事業部にとって大切な収益源になった。

 

 自分の役割を知っているリーダーは多い。だが、メンバー1人ひとりの役割をしっかりと伝えて、メンバー1人ひとりに納得してもらい、チームとして最高のアウトプットを出し続けているリーダーは思っている以上に少ない。

 

 リーダーはメンバー1人ひとりのポテンシャルを最大に発揮させなければならない。その第1歩がリーダーはメンバー1人ひとりにチーム内での役割を周知徹底させることだ。

 

  • リーダーが役割一つひとつの「目的」「重要性」「必要性」を明確にしている
  • 役割を果たしたときのイメージをチームで共有している
  • 一人ひとりが最大のパフォーマンスを提供している
  • 無駄な役割なんて一つもないとチーム全体に浸透している

 

これが「役割分担」するときのルールだ。根底にあるのは、1人ひとりの負担を減らす

ために役割を分担するということではないということだ。「役割」とはメンバー1人ひとりが最大級に活躍する「場所」のことだ。

 1人ひとりが与えられた「場所」で最大級の活躍をすることにより、チームのアウトプットは劇的に上がる。何よりもチームの雰囲気が良くなる。

 

「人は城、人は石垣」

 

 かの有名な戦国武将の武田信玄の言葉だ。大小の石が集まって初めて城は出来上がる。小さな石一つでも欠けたら城は崩れる。

 無駄な役割なんて一つもない。

 リーダーはメンバーが最大級に活躍できる「場所」を提供しなければならない。それがリーダーの役割だ。

 リーダーが「役割」を全うした先には「成功」しかない。

 

 話を先の上原に戻す。

 日本球界に復帰する際に、読売巨人軍の監督である高橋由伸と起用方法であったり、役割であったりと様々な話をしたのだろう。高橋と上原は同い年、さらには誕生日まで同じだ。同級生であり、元同僚でもある。ただ、今は監督と選手の関係だ。それぞれの役割がある中、上原は自分が「便利屋」になることを4万人以上の観衆の前でコミットした。日本生まれ、アメリカ育ちの「雑草」の魂込めたこの言葉を決して忘れない。

 便利屋として最高のパフォーマンスを発揮している上原の今シーズンを期待している。

 

 

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「僕には飛び抜けた部分がない。ないけれど、穴もない。だからこそ、途中で変えられることがないし、試合に出場し続けられる。昔はコンプレックスだったことが、今では最強の武器となっている。全てが及第点では使い道がなくても80点、90点ならかけがえのない戦力になれる」

 

これは、阪神タイガース鳥谷敬(とりたに たかし)が書いている「キャプテンシー(角川新書)」の一節だ。

 

 人様に「リーダーシップ」「チームマネジメント」といったことを話す手前上、自分でもインプットは本当に大切にしている。少なくとも週1冊は何かしらの書籍を読む。

 本書はたまたま移動中に駅中の書店で見つけた。もともと野球好きだ。この手の書籍には目がない。しかも鳥谷敬ときた。個人的に大好きな選手だ。まず、ルックスが抜群に良い。

 

 ここで阪神タイガース「鳥谷敬」の紹介をざっくりと行う。

 

 1981年生まれのプロ野球選手だ。記憶に新しいのが2017年9月8日の対DeNA戦でNPB史上50人目の2000本安打を放っている。

 生まれは東京都東村山市。幼少期は西武ライオンズの秋山幸二に死ぬほど憧れて高校は埼玉聖望学園に入学。3年夏に遊撃手兼投手として甲子園に出場。残念ながら、初戦で敗退するものの、強豪早稲田大学に入学。1年時から遊撃手のレギュラーになり、在学中は全試合にスタメン出場。ただ、試合にでるだけではない。2年時の春季リーグでは、リーグ史上最速タイで三冠王を獲得。さらにはチームとしても3年時の春季から4年時の秋季までチームリーグ4連覇に貢献。遊撃手としても通算で5回のベストナインに選ばれる。六大学リーグの押しも押されぬ大スターだ。ちなみに同期には米大リーグでも活躍した現ヤクルトスワローズの青木宣親がいる。

 

 卒業後の2003年には大物新人選手としてダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)、読売ジャイアンツ、埼玉西武ライオンズとセパの強豪チームが獲得を希望する中、「天然芝の球団がいい」と縁もゆかりもない阪神タイガースへぶっこみ入団。

 入団後はチームの顔として、2009年には選手会長に就任し、2012年には野手のキャプテンとなっている。本人曰く、「リーダーシップを発揮する立場ではない」とのことだが、周囲はそれを許さない。

 選手としても先の2000本安打だけでなく、ベストナイン6回、ゴールデングラブ賞5回と申し分ない。そして、特筆すべきは連続出場試合だ。なんと2005年から2017年まで連続で試合に出場し続けている。多少痛いところがあっても試合にでれば治るではないが、スーパースターにも関わらずその泥臭さはファンの心を掴んで離さない。2017年シーズンに関して言えば、顔面にデッドボールを受けた翌日にフェイスガードをつけて代打出場。一般企業でいえば、全身骨折したにも関わらずタクシーに乗ってでも出社するといったところか・・・

 

 そんな鳥谷の著書を読んだ。一番、腑に落ちたのは冒頭の一節だ。

 最近では、「苦手な部分を伸ばしていきましょう」なんていう教育風潮は少なくなっている。変わりに得意な部分を伸ばして伸ばして「オンリーワン」になりましょうといった具合だ。その逆を行くではないが、80点、90点でかけがえのない選手になれると断言している。

 

 本コラムは、「リーダーシップ」「チームマネジメント」といったいわゆる組織論をテーマにしている。確かに自分がリーダーとして考えたときそんな部下がいれば心強いこと限りない。

 営業マンを例に挙げてみよう。クロージングにはめっぽう強いが、顧客フォローが弱い。顧客フォローは強いが新規開拓能力が低い。その手の営業マンよりも、クロージング、顧客フォロー、新規開拓能力、企画力、提案力と全て80点、90点の方が良い。総合力が高い方が心強い。人材不足の昨今、営業マンの転職市場も活発だ。クロージングがめっぽう強い営業マンが突然「転職をしたい」と言い出すとリーダーとしては困る。替えがいないからだ。組織としてのクロージング能力が一気に下がる。他に関しても同様だ。それが、全てのプロセスにおいてそこそこの成果を上げるといった営業マンを何名も育成すれば、退職した後のリスク分散にもなる。

そして何よりも、爆発的な売上を上げることはないが、何カ月にもわたり安定した売上を上げ続けてくれる営業マンは営業戦略を考えるときに大いに計算できる。

 

私事で恐縮であるが、私が初めて管理職になったときの話だ。

当時は100年に一度の大不況と言われたリーマンショックの直後だった。当時はIT業界に身を置いていた。金融機関をはじめとする大手エンドユーザーが次々とIT投資を止めていき、その影響で当時勤めていた会社の売上も下がっていった。下請け企業の怖いところだ。

会社の経営陣たちも生き残るためにリストラ、減給を行った。会社がなくなってしまえば全社員が路頭に迷うことになる。当時の経営陣たちも苦渋の決断だったに違いない。

そんなときに上司が突然退職し、私は管理職になった。任せられたのは「営業部」だった。私自身も管理職になる前までは4年連続でトップセールスを取っていた。「何とかなるだろう」と高をくくっていたが、そうは問屋が卸さなかった。

一番、頭を悩ませたことは計算していた優秀な営業マンたちがリストラ、減給を繰り返す会社に不信を持ち次々と退職していったことだ。退職した営業マンたちはみながみなクロージング能力に特化しているものたちだった。顧客フォローや資料作成といった地味なプロセスよりもとにかく売上アップに直結するクロージングを何よりも重要視している者たちだった。もっと言うと、当時の営業部の売上アップは彼らのクロージング能力抜きにしては考えられなかった。

そんな頼りにしていた営業マンたちが退職した。残った営業マンと言えば、「過去に2回リストラ宣告されたもの」「給与をはじめとする会社の福利厚生が次々と変わり、会社に不信しかもっていないもの」「そもそも営業という職種に全く興味がないもの」と本当に散々だった。

 

とは言え、会社は永続しなければならない。経営陣は彼らの力をフルに使い、売上を上げろという。

当時、周囲からは「期待している」なんて言われたことがない。皆が皆、同情してくれた。

 

途方に暮れたが、今思うと当時の状況には本当に感謝している。理由は「80点、90点の営業マンを育成し、組織としての成果を上げることに成功したからだ」。

 

ではどのように教育したかを紹介する。

まず、教育以前に前提にあるのは「落ちこぼれなんて誰一人作らない」「誰一人として絶対に見捨てない」というマインドだ。これがないと、どんなスキームを導入しても成果は上がらない。

当時の私は残ったメンバーの強みがどこなのかが全く分からなかった。そこで、「まずは、強みを知ろう」という軽い気持ちで担当している仕事内容を変えて、様々な仕事を経験してもらうことにした。「ジョブローテーション制度」と名付け、まずは運用してみた。

様々な仕事を経験するはいいが、どれもこれも中途半端になるのでは本末転倒なので、事前に出すべき成果はすべて数値化していて、その数値をクリアしたら次の仕事に移ってもらった。数値に関しても「売上」といった不確実なことではなく、「コール数」「顧客訪問数」「提案数」といった時間をかければ初心者でもできる内容にした。

 

人が辞めることに恐怖心を抱いていた。誰が欠けても最低限の成果を出す組織にしたかった。そして、このジョブローテーションが一通り終わった段階で、誰が、どの「役割」に一番マッチしているのかを決めて、その役割を全うしてもらうようにしてみた。

すると誰にも期待されていなかった組織だったにも関わらず、2年間足らずで売上が160%アップした。

当然、辞めていく営業マンもいた。その人しか持っていないノウハウもあった。営業マンが辞めても組織は存続するし、誰がいつ抜けても成果を出し続けなければならない。

組織には「2:6:2」の法則なるものがある。底辺の2割は落ちこぼれだ。やる気もない、結果も出さない。真ん中の6割はそこそこ成果を出す人材だ。

優秀な営業マン同様に、下位8割の営業マンたちにも上位2割の営業マンと同様な成果を出してもらいたい。そのためには彼らに様々な仕事を経験させ、個人の力を上げる必要があった。そこで導入したのが「ジョブローテーション制度」だった。

全てのプロセスを経験してもらうことにより、業績アップに必要なプロセスにおいては80点、90点ではあるが、確実に応えてくれた。人が辞めても変わりの人がそのタスクをフォローする体制を作ることができた。

優秀な人がいなくなっても、残ったメンバーで最大の成果を出す。落ちこぼれなんて一人も作らない。

ジョブローテーション制度でもまれた社員のほとんどが今ではリーダーになっている。

 

 先の鳥谷だが、本書の締めくくりでこう言っている。

 

「キャプテンに正解はない。どんなに覇気を感じさせようとも、チームが負ければいいキャプテンとは言えない。チームが勝てばそれがいいキャプテンなのだ」

 

 優秀なメンバーだろうが、なんだろうがそこは関係ない。リーダーは勝ち続けるための戦略を考え、実践し、組織を勝たせてもらいたい。

 そのための一つの「やり方」としてこのジョブローテーション制度をまずは試してもらいたい。

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【第9回】「ドS先輩」から学んだリーダーが持つべき最強コミュニケーション術=濱潟好古 https://kigyou.biz/archives/4456 https://kigyou.biz/archives/4456#respond Sun, 18 Mar 2018 23:00:12 +0000 https://kigyou.biz/?p=4456  現在、アメリカ・シアトルが熱..

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 現在、アメリカ・シアトルが熱いらしい。

 世界のICHIROが古巣シアトルマリナーズに復帰してからこのシアトルという街が気になってしょうがない。

 ICHIRO自身も所属先が決まりまずは一安心というところだろう。一ファンである私もそうではあるが・・・

 この復帰で気になったことがあった。

 それはICHIRO自身がというよりICHIROを取り巻く周囲の反応だ。ICHIROの安打数を自作の「イチ・メーター」でカウントし続けているエイミー・フランツさんはICHIROの古巣復帰を誰よりも喜び、メディアに対してこう言った。「50歳になっても何歳になっても現役を続ける限り応援し続けます」。ファン冥利に尽きるとはまさにこのことだろう。マイアミマーリンズで同僚だったディーゴドンは「また一緒にやれるのが楽しみ。質問が100万個ぐらいある」と新天地でもICHIROを師として仰ぐことを大々的に話している。ちなみにディーゴードンは2015年に首位打者、2014年、2015年、そして2017年には盗塁王を獲得しているメジャーリーグにおけるトッププレイヤーだ。

 ファンも同僚すらも魅了するICHIRO。決して、メディアに対してリップサービスをするようなタイプではないが多くの人がICHIROに影響を受けている。ICHIROのような野球選手になりたいと思っている世の野球小僧は数えきれない。

 なぜ、彼がここまで人を影響させることができるかとふと考えたとき、それは決して実績だけではないと筆者は考える。

 では何だろう。

 

 それは、野球人としての「背中」だ。

 

試合に出る出ないは別として、いつも完全に準備をする。仮に凡打になったとしても決して、バットを地面に叩きつけたりはしない。試合後のインタビューでも発言がブレることはない。そういった野球人ICHIROの背中に周囲は魅了されるのではないだろうか。

 

私自身も学生時代に多大なる影響を受けた先輩がいた。この先輩と出会わなければ今の自分はなかったのではとすら思っている。

本コラムの第7回「リーダーの保身は100害あって一利なし」でも書かせていただいたが、筆者は神奈川県の横須賀市にある防衛大学校を卒業している。幹部自衛官を育成する教育機関だ。一般大学は文部科学省の管轄だが、防衛大学校は防衛省の管轄だ。

一般大学との決定的な違いは学生生活にある。まず、防衛大学校は完全全寮制だ。土日以外は外出できない。1学年に関して言えば、土日の宿泊は禁止だ。さらには、完全縦割り社会だ。4学年をリーダーとして、3学年、2学年、1学年というヒエラルキーの下、下級生たちは学園生活をする。この学園生活のことを「学生舎」と呼んだ。さらには「気力」だけではなく「体力」もつけるという名目で、全学生には運動部に入ることが課せられる。この運動部のことを「校友会」と呼んだ。

私が所属していた校友会は「短艇委員会(たんていいいんかい)」だった。「カッター」と呼ばれる短艇を漕ぐスポーツだ。ここで「カッター」を紹介させていただく。一言で言うと、15名から構成される「手漕ぎボート」のことだ。映画「タイタニック」で、最後にディカプリオ達を救いに行く船、と言ったら想像しやすいかもしれない。マリーンスポーツと言えば聞こえはいいが、そんな生ぬるいものではなかった。防衛大学校の中でも指折りにきつい校友会だった。

「すべてはこの瞬間(とき)のために」という標語の下、毎年5月に行われる「全日本大会」に全てをかける。レースなんてたかだか11分前後であったが、その11分前後のために毎日練習に励むわけだ。努力は裏切らないではないが、過酷な練習の効果もあり筆者自身も3年間で日本一を2回取った。あのときの感動は今でも忘れない。

その「短艇委員会」の先輩に、超がつくほどの「ドS」な先輩がいた。筆者が1学年のときの3学年だ。1学年に対しても相当に厳しかったが、それ以上に自分に対しては本当に厳しい先輩だった。

例えば、他の部員が腕立て伏せを50回するところ、この「ドS先輩」は100回やる。他の部員が200メートルダッシュを5本やるところ「ドS先輩」は10本やるといった具合だ。そこに一切の妥協はなかった。

短艇委員会は海上競技なので練習は「ポンド」と呼ばれる「走水港」の一角で行う。ポンドへと向かう途中に数百段からなる階段がある。我々はその階段は「ポンド階段」と呼んだ。ポンドに向かうときは下りなのでまだいいのだが、帰りは本当にきつい。練習後のパンパンの足で数百段からなる「ポンド階段」を駆け足であがる。もちろん途中で足がからまり脱落する部員もいたが、「ドS先輩」はその脱落した部員をどつく役だった。「ドS先輩」にどつかれながら登り切ったあとには決まってこう言われた。

 

「もう1往復」

 

筆者自身も入部したての体力はない頃はこの「ポンド階段」で本当に苦労した。たまに、「ポンド階段」だけをひたすら何十往復もするという恐ろしい練習メニューの日があった。事前に何往復するかは一切伝えられない。登り切り、そろそろ終わるかなというときに「もう1往復」と言われる。あれは本当にきつかった。初めてこのメニューを行ったとき、もちろん脱落した。確か13往復で脱落した。脱落後は後ろから「ドS先輩」の鉄拳制裁だ。登り切り小休憩に入るのだが水を飲もうとしたときに「ドS先輩」から言われた言葉を今でも忘れない。

 

「権利を主張する前に義務を果たせよ。水飲む前にもう1往復してこい」

入部当初はこの「ドS先輩」が本当に苦手だった。しかし、この感情はすぐさま「尊敬」に変わった。たまたまその日は大雨で練習がオフになった。「ドS先輩」にこれ以上どつかれるのも嫌だったので、自主練も兼ねて「ポンド階段」に行くことにした。

向かう途中に雨が強くなってきたので、1往復だけ上り下りして帰ろうと思った。そんな軽い気持ちでポンド階段を降りようとしたら階段下からものすごい勢いで走ってくる人がいた。「ドS先輩」だった。私は見つかったらやばいと思いポンド階段の死角に隠れた。「ドS先輩」は隠れている私に気づかず黙々と上り下りを続ける。それもたった一人でだ。雨と汗で体からは湯気が出ていた。人の知らないところで常人の何十倍も努力をしていた。翌日の練習から私は「ドS先輩」の背中を追っていた。そして、その背中はいつぞやか憧れに変わった。この人の下でどんなきついことでもやってやろうと思った。共に日本一を味わいたいと思った。

 

「やってみせ いってきかせて させてみて 褒めてやらねば人は動かじ」

 

これは連合艦隊司令長官の山本五十六の名言だ。リーダーは背中で手本を見せなければならない。部下たちの前でやって見せる必要がある。

仕事上、多くの経営者や管理職といった様々なリーダーの方とお会いする機会が多い。「部下に思いが伝わらない」「部下が言われたことしかやらない」「自主的に動く部下がいない」といったことで悩んでいるリーダーは本当に多い。言い方を変えれば「部下で困っている」リーダーたちだ。

解決策を聞かれるときもよくある。

そんなときはまずは「背中で見せてください。率先垂範してください」と言うようにしている。部下に求める前に自分自身の行動を変える必要がある場合が圧倒的に多いからだ。権利を主張する前にリーダーとしての義務を果たす必要がある。誰よりも自分に厳しく目の前のことに立ち向かっているリーダーを見て何も感じない部下はいない。

まずは誰よりも早く出社してみればいい。誰よりも働けばいい。自分のできないことは強制せず、部下ができないで悩んでいるときは、まずは自分でやって見せればいい。

背中で見せることは最強のコミュニケーション術だ。しんどくなるときもあるかもしれないが、動き続ける組織、動き続ける部下は背中で見せ続けるリーダーの下でしか生まれない。

 

あの日、水を飲もうとしたときに「ドS先輩」から言われた一言は、10年以上経った今でも毎日意識している。

 

「権利を主張する前に義務を果たせ」

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【第8回】「男・村田修一」から学んだ人を惹きつけるリーダーが持っている3つの条件 https://kigyou.biz/archives/4448 https://kigyou.biz/archives/4448#respond Sun, 11 Mar 2018 23:00:29 +0000 https://kigyou.biz/?p=4448 2018年3月7日に野球ファン..

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2018年3月7日に野球ファンとしてはうれしいニュースが飛び込んできた。

 

米大リーグマイアミ・マーリンズからフリーエージェント(以下、FA)になっていたレジェンドイチローが古巣シアトル・マリナーズに復帰するというものだ。

史上稀に見る米大リーグの冷え切ったFA市場は日米のレジェンドであるイチローの来季所属先決定を大いに遅らせた。一ファンとしても本当にヤキモキした。

復帰会見では、「よく50歳まで現役という話をされますが、僕は最低50歳といつも言っているので、そこは誤解しないでほしい」と何ともイチローらしいコメントをかましてくれた。来季の活躍が楽しみだ。

 

そして、驚くべきニュースはまだ続く。同月9日に、09年からメジャー挑戦を続けていた元読売巨人軍の上原浩二が古巣巨人へ電撃復帰した。当初はメジャーリーグ以外であれば「引退」だと決めていたが「やっぱり野球がやりたい。期待してくれる球団があるなら、そこで燃え尽きたいという気持ちが強くなった」と自分の気持ちと真っ向から向き合い、マーケットを変えてまた野球界に貢献することを誓った。日米通算134勝、128セーブを叩きだしている右腕の活躍が今から楽しみでしかたない。

 

本コラムでは筆者が日米問わずプロ野球ファンということで頻繁に野球ネタが登場するが、正直に言おう。プロ野球の世界ほど怖いものはない。第一に全員が個人事業主だ。そこには何の保証もない。そして、驚くべきことが平均引退年齢29歳という若さだ。一般企業でいえば、ようやく脂がのってきた時期に解雇されるということと同じだ。一見華やかな世界ではあるが、現実はシビアだ。毎年、ドラフトで数十名のプロ野球選手が生まれる一方で、数十名のプロ野球選手が球界を去っている。毎年TBSが放送するドキュメンタリー「プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男達~」は涙抜きでは見ることすら憚れる。突然の非常な戦力外宣告を言い渡された男達が家族のため、自分のためにトライアウトに挑むという内容だ。

 

こうした背景の下、筆者自身、一番気になっていた選手がいた。

 

村田修一(37)元読売巨人軍。

 

馴染みない方もいるだろうから村田を紹介をすると、福岡県の強豪・東福岡高校で投手として、夏の甲子園へ出場。地方大会で見せた村田の投球とホームランは今でも忘れない。卒業後は日本大学に進学し、その後、即戦力として横浜ベイスターズ(現:DeNAベイスターズ)に2002年自由枠で入団する。同い年にはあの平成の怪物「松坂大輔」がいる。横浜ベイスターズで順調にキャリアを積む。いや、輝かしいキャリアと言ってよいだろう。2007年、2008年には2年連続で本塁打王にもなっている。ホームランアーチストとしてもそうだが、太めの体からは想像すらつかない右へ左への軽快なフットワークで守備の達人に贈られるゴールデングラブ賞も獲得している。それも複数回だ。いわば球界を代表する一流選手だ。2011年12月8日にはFA宣言をして、読売巨人軍へ入団。何を隠そう、12月8日は筆者が初めて付き合った彼女の誕生日だ。何かの縁と勝手に感じつつ、同時に喜ばしく思ったことを昨日のように思い出す。球界の盟主である読売巨人軍ではプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも長嶋茂雄、原辰徳も守った華のサードを5年も死守する。ファンからは「男村田」なんて呼ばれ、愛されキャラとしての地位も確立する。この5年もの間、東京ドームでは村田のレプリカユニフォームを着るヤンキー女子を何度見たことか。

そんな村田が2017年10月13日に戦力外通告を受けた。FA移籍では人的補償が発生するという理由で自由契約扱いとなった。GMの鹿取義隆は「チームの若返りのために苦渋の決断をした」とメディアに伝えた。力のあるものが残り、力のないものが去るのがプロ野球界の諸行無常とは言え、筆者自身、驚いた。確かに衰えたとは言え、まだまだ現役バリバリでホットポジションであるサードを一年間守り切る力が村田にはあった。

移籍先はすぐに決まるだろうと多くのOBそしてプロ野球ファンは高をくくっていたが現実は違った。全く決まらない。

 

自由契約になった当日、村田はメディアにこう伝えた。

 

「優勝したいと思って巨人にきて、3回も優勝させてもらって感謝しているし、自分も少しは貢献できたのかなと思う。打てないときでもファンの皆様からはいつも温かい声援をもらい、いつも満員の球場で野球をさせてもらって、本当にありがたかったです」

 

そこには恨みつらみは一切なかった。

誰も否定しない、誰のせいにもしない、全ては自分の力のせいだ、むしろ周囲には感謝をしている。

そんなメッセージを村田から受け取ったような気がした。

 

所属先が決まらないまま、ただひたすら声のかかるのを待つ日々。1月24日には神奈川県厚木市内で約3週間続けてきた「一人キャンプ」を切り上げ、その後は自宅のある神奈川県内と実家のある福岡県内でたった一人の孤独のトレーニングを行う。妥協のないハードトレーニングは例年のシーズン中よりも引きしまった体を作り上げていた。メディアからの取材に対しても「笑顔」で答える。決して暗さは見せない。

今いる状況に対して周囲を責めない、ましては自分を責めることもない。責めたところで現状は何一つ変わらない。「声さえかかればいつでも動ける状態にしておこうと思います」とただひたすらやるべきことを地道に続ける毎日だ。

 

これを一般企業に置き換えてみたらどうだろうか。会社で「重役」を務めていた人がある日突然に「解雇」されるが解雇した会社にも理由があったのだろうと会社を否定せず、周囲も否定せず、ただ黙々と転職活動を続けているといった状況だろうか。

 

本コラムはリーダー、マネージャ向けということもあり、ここで本コラムの趣旨に戻る。

職業柄、多くの経営者や中間管理職を初めとする世のリーダーと接する機会が多いが、彼らから出てくる言葉で気になることがある。思っている通りに成果が出ているときは、良いのだが、成果がでなくなるとどうも後ろ向きな発言をするリーダーが意外に多い。頭の中では、分かっているのだろうがついつい、多くのリーダーたちが、うまく成果が上がらなくなると周囲のせいにしたり、部下のせいにしたり、そして自分のせいにしたりする。「〇〇のせいにする」ということは「〇〇を否定している」ということと同じだ。

環境を否定し、周囲の人を否定し、自分すら否定するリーダーが引っ張る組織の成果が上がることはまずない。それどころかそんなリーダーがいる組織は衰退する。厳しいマーケットで生き残ることはできない。

一方で抜群の成果を上げているリーダーも多くいる。メンバー全員が生き生きと仕事をしている。仕事が楽しくてしょうがないという空気すら感じる。完全にリーダーがメンバーを惹きつけている。彼らに共通していることは大きく3つだ。

 

1つ目は、人を惹きつけるリーダーは決して自己否定も他者否定もしないということだ。

仕事というものは、自分が思っている通りにうまくいくことはなかなかない。それは先の村田も同じだ。自分が思っている通りの契約は望めなかった。常にトライ・アンド・エラーの連続だ。100%思い通りに行かなかった結果に対して、自分を否定したり、周囲を否定する時間ほどもったいないことはない。「否定する前にやるべきこと」がある。

「お客様へのアプローチは正しかったか」

「部下に対しての発言は正しかったか」

「もっとうまい時間の使い方はなかったのか」

「準備は万端だったか」など、自分自身への行動内容を振り返り、正しい行動だったかを考え続け、改善があれば修正することがリーダーの仕事だ。自己も他者も否定している暇などそこにはない。

 

2つ目は、人を惹きつけるリーダーはメンバーにすら自己否定をさせないということだ。

リーダーになると自分のことだけでなくメンバーの感情にも焦点を当てる必要がある。

メンバーが自己否定をするようになるとチームの空気が一気に悪くなる。リーダーの仕事は「メンバーのポテンシャルを最大限に引き出し、メンバーの力を借りて、組織として最大のアウトプットを出すこと」だ。メンバーに自己否定をさせているうちはメンバーのポテンシャルを最大限に引き出すことはできない。組織として「最高」のアウトプットが出せないということだ。

 

そして、3つ目が人を惹きつけるリーダーはメンバーの感情に焦点を当てコミュニケーションを図っているということだ。

メンバーの感情に焦点を当てるということがメンバーのポテンシャルを最大限発揮させるための唯一の近道だ。私事で恐縮ではあるが、私が初めて管理職になったとき、自分に自信が持てずに自己否定ばかりするメンバーがいた。仕事がうまくいかず、落ち込んでばかりいる部下もいた。そんなときこそ、リーダーは、メンバーの感情に焦点を当てて、客観的に状況を把握し、共に対応策を考えなければならない。決して、メンバーを否定してはいけないし、メンバーに自己否定もさせてはいけない。全ては最高のアウトプットを出すためだ。

 

人を惹きつけるリーダーは上記3点を必ず持っている。

 

自分や部下を否定している暇があれば、やり方を改善し続ける。

それは、一般社会でもプロ野球界でも変わらない。

自由契約になって所属先が決まらなければ、今できるトレーニングを考え、実践し、所属先から声がかかるのを待ち続けていた「男」村田から世のリーダーに必要であり、とても大切なことを学んだ。

 

2018年3月5日、国内の独立リーグである栃木ゴールデンブレーブスに入団が決定した。NPB(日本プロ野球機構)ではなかったがすっきりした顔で会見時にはこう言った。

 

「若い選手が多い中で、手本になれるよう、野球に取り組んでいきたい」

 

プレイヤーとしても楽しみではあるが、今後十数年経った後に指導者として日本プロ野球に戻ってくるであろう村田のことがこれから楽しみでしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

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【第7回】リーダーの「保身」は100害あって一利なし=濱潟好古 https://kigyou.biz/archives/4441 https://kigyou.biz/archives/4441#respond Sun, 25 Feb 2018 23:00:17 +0000 https://kigyou.biz/?p=4441  本コラムも第7回まできた。 ..

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 本コラムも第7回まできた。

 毎週1本ずつ寄稿している。

第1回は、日本ハムファイターズの栗山監督をテーマにリーダーに必要な覚悟、第2回は日馬富士事件から学んだリーダーに必要な物事を前に進める力、第3回は闘将星野監督から感じたリーダーコミュニケーション、第4回は常磐線女児出産から感じた部下の評価方法

第5回は世界のイチローも実践しているリーダーに必要な行動原則、そして第6回がオリンピック選手から学ぶ仕事を前に進めるための仕事術だ。

 是非ともバックナンバーも読んでもらいたい。

 

過去6回までは「時事ネタ」を絡めたコラム内容になっているが、今回は筆者の過去の経験から得た内容にしていきたい。

 私事になり大変恐縮ではあるが、筆者は防衛大学校(以下、防衛大)を卒業している。防衛大とは未来の幹部自衛官を養成する教育機関だ。神奈川県横須賀市にある「小原台」と呼ばれる高台で1学年から4学年の総勢1700名が完全全寮制の下、集団生活を行っている。

 一般大学は文部科学省の管轄であるが、将来の幹部自衛官を養成する防衛大は防衛省の管轄となる。身分も学生ではなく特別職国家公務員だ。一般大学同様の教育課程以外に訓練課程がある。各学年全員が同じ訓練を行う「共通訓練」と、2学年において陸上・海上・航空要員に区分された後に行う「専門訓練」がある。

 そして、一般大学との違いはそのキャンパスライフにある。

 まず、防衛大は完全全寮制だ。土日以外は外出できない。校内では指定された制服、作業服を着て過ごす。外出時の服装は制服であり、外出前には制服の服装点検がある。その点検に合格しなければ外出することはできない。日々、厳しい生活を送っている防衛大生にとって、外出できないことほどつらいものはない。また、4学年から1学年まで完全縦割り社会で、軍隊に近しい徹底された規律の下、将来のリーダーを育てるべく徹底的に鍛えられる。今でこそないようだが、反抗的な態度を取れば「体罰指導」が待っていた。上級生が怖すぎて反抗的な態度をとる1学年はほぼ皆無ではあったが・・・

総勢600名の1学年は4月1日が着校日となるが、初日に4学年に指導されている2学年の姿を見て驚いたことを、つい昨日の出来事のように思い出す。

 4月5日の入校日までは「お客様期間」と言われ、実際の防衛大での生活を体験する。新1学年は「防衛大で生活していけるかどうか」をこの5日間で見極められるわけだ。つい、最近までぬくぬくとした高校生活を送っていた私にとって、防衛大での生活は本当にインパクトのあるものだった。結果的にこのお客様期間で、30名前後の1学年が入校前に退校した。お客様期間が終わり、晴れて防衛大の学生となった4月5日の夜を持ち、一般大学の学生が送る夢のキャンパスライフとは対極関係にある過酷なキャンパスライフを送ることになる。そして、この4月5日の夜に上級生から言われた内容は15年以上たったいまでも忘れない。

 

「集団生活を行うにあたってのルールを説明する。1つ、ウソをつくな。2つ、言い訳するな。3つ、仲間を売るな。以上を破ったときは厳しく指導する」

 

 この3つに共通していることは「保身に走るな」ということだ。幹部自衛官になると、国家防衛、災害派遣、人命救助と、自分のことよりも優先しなくてはならないことは山ほどある。将来、幹部自衛官になり、有事の際に「保身に走る」ような行動を取られては困るというわけだ。

 「保身」とは自分の地位、名誉、安全を守ること。ウソをついて自分の地位を守ったり、仲間を売って自分の安全を守るような行動をとったときは厳しく指導された。この指導は2学年に上がるまでほぼ毎日続く。指導内容が過激すぎて、4月1日に600名いた1学年は1年の終わるころには100名以上が自主退校している。

 この「保身に走るな」ということは防衛大や幹部自衛官のみならず、一般企業のリーダーにも当てはまる。過去のコラムにも何度も出ているがリーダーの仕事は「部下のポテンシャルを最大限に引き出し、部下の力を借りて、組織として最大のアウトプットを出す」ことだ。そのために必要なことは部下との信頼関係であることは当然なことであるし、保身に走るようなリーダーであれば部下からの信頼どころか周囲からの信頼すら得ることはできない。

信頼を得られないリーダーが率いる組織に待っているのは衰退だ。

 ここからは手前みそな話になるが、ご容赦願いたい。

防衛大を卒業後、幹部候補生学校を経て、私は一般企業に入社した。6年目には管理職になり部下を持つ立場となった。

 管理職になったばかりのころ、入社1年目のIさんがお客様から大クレームをもらった。上司の私が別件で客先打ち合わせ中だったので他の先輩社員にどのように対応するか確認したそうだが「クレーム?僕が行かなければならないこと?今別件で忙しいから対応できない。とりあえず謝罪してうまくやっておいてくれ」と言われたという。

 打ち合わせが終わり、その部下からの着信に折り返し連絡したところ、その部下は「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と私に謝ってきた。

 一刻の猶予も許されない状況であったし、そもそもまだ1年目の部下だ。彼にクレーム対応はできないと判断し、自分自身のタスクはいったん後回しにし、一緒に謝罪に向かった。お客様先でクレームの理由、事の背景を伺い、心からの謝罪とトラブルの対処についてできる限りの話をした。途中、「御社の社員教育はどうなっているのか」と厳しいお言葉も頂いたが、それに対して一切言い訳はしなかった。言い訳をするとどうなるかは防衛大で痛いほど経験したことだ。そもそも、言い訳したところでトラブルは解決しない。

 

 その後、クレームは無事に落ち着いた。本来クレームから得るものではないが、とても良いことが2つ起こった。

 1つ目は、その後、このお客様との関係がとても良くなったことだ。下手な言い訳をしたり、トラブルを他の誰かのせいにしていればこのような関係を構築することはできなかっただろう。後日、先方と数回飲みに行ったがあのときの私の行動に対して「とても潔かった」とすら言われた。保身に走っていればまず生まれなかった関係だ。

 そして2つ目は、クレームをもらったIさんが当時の私の行動に感化されたのか、自分に後輩社員ができたときに同じ行いをその後輩にしたことだ。後輩社員はIさんのことをとても信頼し、尊敬するようになり、チームの空気もとても良いものとなったことは言うまでもない。

 お客様からのクレームは誰でも嫌だし、逃げ出したくなるときもあるだろう。だが、そういったときこそ「保身に走るな」を肝に銘じたい。命まで取られることなんてないので、そこは安心してよいだろう。部下のことなら猶更だ。リーダーであれば、自分のことはさておき、部下が困っていれば、それは全力で対応する必要がある。自己保身に走れば、その瞬間には自分自身は守れても、長期的に、かつトータルで見れば信頼は必ず失われる。

 

2018年1月8日、成人の日に起きた「はれのひ株式会社突然の店舗閉鎖」などは自己保身に走った結果全てを失うことになったという典型的な例だ。

 神奈川県横浜市で振袖の販売、レンタル、着付け、フォトスタジオを運営していた「はれのひ株式会社」が1月8日に突然休業し、翌1月9日より全店舗を閉鎖し、事実上の事業停止、そして同年1月26日は横浜地方裁判所から破産手続きを受けた。全ての企業が完璧な経営を行えば倒産する会社など生まれない。しかし、そうもいかないのがこの資本主義社会の現実でもある。各メディアは年始早々、このニュースを取り上げた。特に問題になったのがはれのひ株式会社のトップである篠崎洋一郎社長の雲隠れだ。篠崎社長は成人式の前から行方が分からなくなり新成人はもちろんのこと、その家族も息子娘の晴れの日を見ることなく、そして事情説明を受けることなく人生で一度の晴れ舞台を台無しにされた。怒り心頭になることも無理はない。筆者自身にとってもショッキングな事件であった。

 ここで、篠崎社長が事前に経営が厳しくなっていることを真摯に説明し、他の業者を紹介するといった誠実な行動を取っていればまた結果は変わったかもしれない。いや、100%変わっていただろう。行方をくらますという「保身に走った」結果、事態は最悪のものになった。破産したからといって誰も同情などはしない。

 

 リーダーは絶対に保身に走ってはいけない。防衛大ではこの教育を徹底される。保身に走らなければそのときはきついかもしれないが時間の経過とともに良いことしか生まれない。

 

「うそをつくな、言い訳するな、仲間を売るな」

 

この3つの教えは15年以上たった今でも生きている。

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【第6回】オリンピックから感じる仕事を前に進めるために大切な「2つ」のこと=濱潟好古 https://kigyou.biz/archives/4433 https://kigyou.biz/archives/4433#respond Sun, 18 Feb 2018 23:00:57 +0000 https://kigyou.biz/?p=4433  2月9日に開催された平昌オリ..

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 2月9日に開催された平昌オリンピックもいよいよ大詰めになってきた。本コラムは2月16日(金)の早朝05:00に書いている。現在の日本人選手のメダル獲得状況は、銀メダルが4つ、銅メダルが3つだ。

まだまだ、目玉競技は残っている。ちなみに2月16日(金)本日は男子フィギュアスケートのショートプログラムが行われる。大会前に怪我をして思うような滑りができなかった羽生結弦選手には多いに期待している。そして、スキージャンプラージヒルの個人予選もある。ノーマルヒルでは思うようなジャンプができなかったレジェンド葛西紀明選手も楽しみでしょうがない。

 もちろん、一日本国民として金メダルをとってもらいたいという思いは常にある。応援しているからしょうがない。ただ、オリンピックとは不思議なもので、仮にメダル獲得を期待されつつ、獲得できなかったとしても一生懸命がんばった選手をディスる日本人はほとんどいない。一部の顔を出さない心無いネットユーザーは別だが・・・

 この現象が顕著だったのが、平昌オリンピックの前に開催されたソチ五輪での元日本代表のフィギュアスケーターの浅田真央選手ではないだろうか。通称「マオちゃん」。メダルを期待されつつ、ショートプログラムで転倒を繰り返しまさかの16位に終わる。演技後のインタビューでは「何も分からない」と方針状態。フィギュアスケートの良さをよく理解せずに見ていた筆者ですら「マオちゃん」が心配になった。もはや8歳下の妹を心配するお兄ちゃん感覚だ。翌日に行われたフリースケーティングでは見事に挽回するものの前日のショートプログラムが響きメダル獲得はならなかった。それでも、感無量の表情で、涙をうっすら浮かべながら、歓声に対して笑顔で手を振りながらリンクを去っていく演技後の「マオちゃん」の姿に涙した。悔し涙ではない。感動から生まれる涙だ。全国の「マオちゃん」を応援する国民の心を掴んだことは言うまでもない。

 なぜ、ここまで感動したのかを自分なりに分析した。

 夏季、冬季と4年に1度のサイクルで行われるオリンピック。選手たちは代表に選ばれるかどうかも分からない、自分で開催場所を決めることもできない。そんな中、4年間、選ばれメダルを獲得するために常人では想像できない努力をする。そして、日の丸を背負い、大会中に最高のアウトプットを出すために、マインド、スキルを究極にまで高める。

 ここで忘れてはいけないのが、コーチの存在だ。選手は1人でひたすらがんばるのではなくコーチと二人三脚、もしくは複数名のコーチがいる場合は一枚岩のチームとしてオリンピックまでに最高の状況を作り出す。コーチが間違った指導方法をすれば選手たちも伸び悩む。コーチがディスコミュニケーションを行えば選手は力を発揮しづらくなる。選手たちにとってコーチの存在は不可欠といっても過言ではない。

 

 本コラムは「リーダーシップ」「マネジメント」というテーマなので、ここでこの状況を一般ビジネスに置き換えてみる。置き換えるというともはや語弊があるかもしれない。

 一流オリンピック選手たちのこのオリンピックまでの一連の練習の組み立て方や行動に対する考え方は日常のマネジメント手法にも取り入れることができるし、取り入れるべきことだ。

 

 チームをリードする、チームをマネジメントする際で一番大切なことはチームが最終的に生み出す「アウトプット」であることは間違いない。過去のコラムでも何回も出ているが、リーダー、マネージャーの仕事は「メンバーのポテンシャルを最大限に引き出し、メンバーの力を借りて、チームとして最大のアウトプットをだす」ことだ。文字面だけを見ると、こんなことは分かっていると言い出す世のリーダーたちは多いが、理解しているようで実践できているリーダーは思っている以上に少ない。

 職業柄、多くの経営者や中間管理職といったリーダーたちと接する機会が多いがメンバーの力を最大限に発揮させているリーダーはなかなかいない。では、「メンバーの力」とは何だろうか。それは、ずばり「仕事力」だ。これはメンバー1人ひとりの「個の力」と言っても良いかもしれないがビジネスコラムということで「仕事力」で統一する。

 

 メンバーたちの「仕事力」の集合体がチームのアウトプットだ。ではこの「仕事力」を最大限に高めてもらうためにどのようにチームをマネジメントすればよいのだろうか。

 

 前提を伝えると、「気合」や「根性」といった精神論では「仕事力」は身につかない。頭ごなしのトップダウンで「とにかく成果をあげろ」「とにかく売上を上げろ」「とにかく新規開拓をしまくれ」なんてことを言い続けて最高のアウトプットがでるほどマーケットは甘くない。精神論ではなく、結果に至るまでのロジックが本当に大切になる。

 

 まず、仕事には「納期」なるものがある。決められた期限のことだ。営業マンであれば、「いつまでに〇〇円の売上を上げる」ということになる。毎月末までなのか、3月末までなのか、6月末までなのかと指定される期限は企業によって違うが、共通していえることはこの「いつまでに」という考え方だ。成績が低迷している営業マンの多くがこの「期限」に対する意識が異常に低い。システム開発などの案件もそうだ。「いつまでに」どのような成果物を作るのかということをあらかじめ決めてから開発を行わなければそのプロジェクトはカオスと化す。決められた「納期」までに納品できませんでしたなんて言う話になれば最悪訴訟問題にまで発展することすらある。

営業マンやシステムの開発案件だけではない。企業という組織にももちろん決まった「期限」がある。それは決算月だ。決算月までに目標売上を達成しないといけない。「売上を達成していないので決算月を変えます」なんていう社長がいたとしたらその会社は間違いなく倒産する。オリンピックもそうだ。東京オリンピックであれば2020年7月24日開催なので選手たちはこの7月24日までに最高のアウトプットを出せる状況を作り出さなければならない。開催日を無視して練習をするような選手はまず代表選手に選ばれない。

 

次に「アウトプットイメージ」というものがある。読んで字のごとく、最高のアウトプットを出すために事前に掲げる「イメージ」のことだ。

例えば、18時まで(納期)に飛び込み営業で30社の企業から名刺をもらう「仕事」があったとする。出さなくてはいけないアウトプットは「30社から名刺をもらうこと」なので、これを目標として動くことになる。この目標が「アウトプットイメージ」だ。掲げた「アウトプットイメージ」どおりに順調に名刺をもらえれば良いが、もしかしたら30社ではなく20社からしか名刺をもらえないかもしれない。その20社が実際に生まれた「アウトプット」だ。20社からしかもらえなかった理由は、時間の使い方が下手だったからかもしれないし、事前の準備が疎かだったからかもしれないし、自分では正しいと思っていた時間の使い方や準備の方法が間違っていたのかもしれない。いずれにせよ、アウトプットイメージである「30枚の名刺を獲得すること」はできなかった。これが結果だ。

結果はどうあれ、ここで大切な考え方がある。それは決められた18時という「納期」までに「アウトプットの質」を高めるための工夫をどれだけできたかということだ。「30枚獲得」というアウトプットイメージに近づけられるよう「仕事」を進めることができたかどうかといことだ。そして、マネージャーを始めとするリーダーはメンバーにアウトプットの質を高めさせるための行動をどれだけ共に考え、実践させることができたかということだ。オリンピックでいうならば最高のアウトプットイメージは「金メダル獲得」ということになるだろう。コーチは選手に金メダルを獲得させるために練習内容を組み立て、そしてモチベーションを維持させ続け、体調も最高の状況にしなければならない。コーチがこれらのことを怠ると選手も本番で最高のアウトプットを出せないのではないだろうか。

 

仕事力を上げるために大切なことを言語化してみる。

 

それは、「決められた納期までにアウトプットの質を高めるための行動を繰り返し、最高のアウトプットをだす」ことだ。

 

 結果が出た、出なかったで「あーだ、こーだ」というのは二流、三流のリーダーだ。そんなことに時間を使うのではなく、メンバーに「納期」を徹底的に意識させ、そして「アウトプットイメージ」に近づくよう「アウトプットの質」を高める行動を繰り返し行わせてもらいたい。この繰り返しがマネージャーの仕事力を上げるために必要な行動になる。

今回のコラムでは「仕事力」を上げるために必要なことを触りだけご紹介したが、詳しくは拙著「何があっても必ず結果を出す 防衛大式最強の仕事(あさ出版)」に書いてあるので、もしよろしければぜひともお手にとってもらいたい。

 

 2018年2月16日現在、東京オリンピックまで残り889日。

 日の丸を背負ったトップアスリートたちが東京で躍動している姿を楽しみにしている。

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【第5回】イチローに学ぶ動き続ける組織が持つべき「行動原則」=濱潟好古 https://kigyou.biz/archives/4426 https://kigyou.biz/archives/4426#respond Sun, 11 Feb 2018 23:00:49 +0000 https://kigyou.biz/?p=4426  2018年2月9日に平昌オリ..

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 2018年2月9日に平昌オリンピックが開会した。2月25日までの17日間、日本を代表する一流プレイヤーたちの活躍が楽しみでしかたない。勝っても負けてもドラマがあるのが国際舞台の醍醐味だ。 

 

 国際大会のドラマと言えば今でも忘れられない大会がある。

2009年3月に開催された第2回WBC(ワールドベースボールクラシック)だ。WBCとは、メジャーリーグベースボール(MLB)機構とMLB選手会により立ち上げられたワールドベースボールクラシックインク(WBCI)が主催する野球の世界一決定戦のことだ。

日本チームは「侍ジャパン」と呼ばれ、王監督率いる第1回大会と原監督率いる第2回で強豪国を下し、世界一になっている。

 

第2回WBCが開催される1年前は北京オリンピック開催の年でもあり、当時の世間の目は2008年の北京オリンピックに向けられていた。監督人選も北京オリンピックが終わってからという「いきあたりばったり」を感じざるを得ない状況の中、選手の招集が始まった。招集選手は日本で活躍する選手だけでなく、現役日本人大リーガーに及ぶ。当時ボストンレッドソックスに所属していた松坂大輔、シアトルマリナーズ在籍の城島健司、シカゴカブス在籍の福留孝介にタンパベイレイズの岩村明憲。

 

その中でも一番の注目は当時シアトルマリナーズに在籍していたイチローだった。今やアメリカでも最も有名な日本人だ。

 

イチローの経歴をざっくり紹介すると、1992年にドラフト4位でオリックスブルーウェーブに入団。3年目の1994年に登録名を「鈴木」から「イチロー」に変えて大ブレイク。日本プロ野球界初の年間200安打に始まり、数々のタイトルを獲得し、日本プロ野球史上最年少でシーズンMVPを獲得。その後、2000年まで7年連続でパリーグの首位打者、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得し、長年の夢であった大リーグへ挑戦し、日本人野手初のメジャーリーガーとなる。

米メディアの評価がさほど高くない中、大リーグ1年目から新人王、MVP、首位打者、盗塁王、シルバースラッガー賞、ゴールデングラブ賞を獲得。さすがとしか言いようがない。

 

2009年に侍ジャパンに合流した際は、8年連続でシーズン200安打、オールスター出場、ゴールデングラブ賞を獲得ともはや外国人顔負けのバリバリのメジャーリーガーだった。当然、ファンの間でもイチローがWBCで活躍することを疑うものはほぼいなかった。筆者自身もどんな活躍をするのかワクワクしていたものだ。

そのイチローが大会開幕前の練習試合から全く打てない。大会開幕後も打率.200前後と全く本来の力を出し切れない。一ファンとしてもヤキモキしたものだ。それが、大会決勝の韓国戦で爆発する。6打数4安打、決勝の2点適時打を放ち、侍ジャパンの2大会連続の世界一に貢献する。

何を隠そう。今はほとんど存在しない「ワンセグ」なるもので、当時勤めていた会社の上長とこの瞬間を見ていた。震え、そして興奮した。

 

現役プロ野球選手の中にもイチローを尊敬するものは後を絶たない。ソフトバンクホークス所属だった川崎宗則はイチローを慕って、海を渡り、長年の夢だったイチローと同じユニフォームに袖を通した。東京ヤクルトスワローズの青木宣親はイチローに次ぐ安打製造機として日本、アメリカで活躍し、2018年に古巣ヤクルトスワローズに戻ってきた。今後の活躍が楽しみな選手の1人だ。

そして、驚くことにイチローへの尊敬はプロ野球選手だけにとどまらない。職業柄、多くの経営者や中間管理職と会う機会が多いが彼らのほとんどがイチローに対して好印象を持っている。最近ではイチローを例に出す研修会社やコンサルタントも後を絶たない。素晴らしい実績を残しているから、日米で活躍したからという理由だけではない。

イチローの特筆すべき点はその「準備力」の高さだ。「準備する」ことはビジネスマンにとっては当たり前であり、必ずやらなければならないことだ。イチローはその準備を異常なまでに行う。

調子が良い日、調子が悪い日、試合に出る日、試合に出ない日と関係なく、試合前には完璧のパフォーマンスを発揮するレベルまで自身を持っていく。いざ、フィールドに立ったときに最高のアウトプットを出すためだ。準備という“当たり前”のことをとことんまで“異常”に行うイチローに世のビジネスマンたちは惹きつけられているようだ。イチロー名言集なんてビジネス書も出ているくらいなのでそれは間違いないだろう。

 

本コラムはリーダー向けの内容になるので、ここでリーダーに置き換えて考えてみたい。イチローが行っていることは「決められた期限までに最高のアウトプットを出すために日々全力で準備をしている」ということだ。過去4回のコラムでも何度も出ているがリーダーの仕事は「部下たちのポテンシャルを最大限に引き出し、部下たちの力を借りて、最高のアウトプットを出すこと」だ。最高のアウトプットを出すために準備をするという点ではメジャーリーガーと世のリーダーは何も変わらない。

こんなことを研修などで話すと「準備なんて当たり前」というリアクションを取る経営者や中間管理職は多くいる。ただ、現実問題、ここまで徹底的に準備ができているリーダーは多くない。もっと言うと、一時的に準備はするものの、継続的に粘り強く、当たり前のレベルになるまで「準備」をやり続けるリーダーはほとんどいない。

大切なことは誰もが“当たり前”だと思っていることを“異常”なまでに行うことだ。

私事で恐縮ではあるが、一般企業に入社した際にこの当たり前のことが当たり前にできていないビジネスマンが多くて驚いた。

初めて部下を持つ立場になったときもこの点で苦労した。売上に直結する「交渉」や「クロージング」など他の工程に比べて派手なところには力を入れる部下は多くいたが、「開拓コール」や地道な「顧客フォロー」、地味な「書類作成及び資料作成」など、どちらかというと売上になるまでには時間がかかる工程に関してはついつい手を抜きがちになるものがほとんどだった。

重要だとは思ってはいるものの、実際の行動に落とし込んで徹底的に実践すること、させることは難しいと本当に感じたものだ。

難しい難しくない関係なくリーダーであれば、自分はもちろんのこと、部下たちにもこの“当たり前”のことを徹底させなければならない。なぜならば、“当たり前”の徹底は最高のアウトプットを出すためには欠かせないことだから。最高のアウトプットを出すまでの工程を徹底させなければ大切な場面でほころぶ可能性がある。

準備不足のために大切な商談で「ヘマ」をかますことほどもったいないことはない。準備不足のために、相手に「悪印象」を持たせてしまうことほど愚かなことはない。それこそ服装からだ。極端な話、毎日靴は磨いているのかというところから徹底させる必要がある。とは言え、 部下も人間だ。ただ、徹底させるだけでは、反抗したくもなるものだ。そうさせないために必要なことが徹底させること一つ一つに「意義目的」を持たせることだ。

これはリーダーとして大切な仕事になる。人は納得しなければ動かない。部下たちに納得してもらう必要がある。そのために必要なことがこの「意義目的」になる。

 

「なぜピカピカの靴でお客様先へ行かなければならないのか」

「なぜ顧客フォローが大切なのか」

「なぜ丁寧なメールを書かなければならないのか」

 

「なぜやらなければならないのか」すべての仕事の目的をはっきりさせる。しつこいようだが全てはチームとして最高のアウトプットを出すためだ。1回や2回言うだけでは浸透などしない。イチローだってそうだ。毎日、目的意識をもって準備をしている。ひたすらやり続ける。1日、2日準備をした程度であんな実績は残せない。リーダーもひたすら言い続ける必要がある。

そして、「徹底されていない」と思ったらその瞬間に本人に伝える。決して、後回しにはしない。後回しにすることは同時にチームの成長を止めていることと同じだ。徹底させられ続けることに対して反抗的な態度をとる部下もいるかもしれないが、ブレてはいけない。リーダーがブレるとチームという船がどこに進んでいるの分からなくなる。要するに遭難船と同じだ。反抗的な態度にいらだつこともあるかもしれないが、グッとこらえて意義目的を含ませた徹底指導を行い続ける必要がある。

 

「当たり前のことを当たり前にやる」

「当たり前のことをとことんまで非凡にやる」

 

この徹底こそが、最高のアウトプットを出すチームに必要な最低限の仕組だ。浸透するまでに時間がかかるかもしれない。最高のアウトプットがいとも簡単に出るようであれば、それこそすべての企業が上場している。なかなか、出ないからこそ粘って、もがき苦しみながら最高のアウトプットを出そうとする。リーダーとしての「資質」を上げるためにはこのプロセスも大切なものになる。

世のリーダーたちには粘り強く、準備を始めとする“当たり前”のことを徹底できる精鋭組織を是非作ってもらいたい。精鋭部隊を構築できれば、面白いほどにアウトプットが出るようになる。

 

 2018年2月現在、イチローはまだ所属先が決まっていない。

 年末に愛知県豊山町で行われた「イチロー杯争奪軟式野球大会」の閉会式で自身の現状を自虐的にこう話した。

 

「ペットショップで売れ残った大きな犬」

 

発言だけ聞くと、何とも後ろ向きで超絶ネガティブ感満載ではあるが一ファンとしては全く心配していない。

 

 なぜかって?

 

 当たり前のことを異常なまでに徹底できる人間の強さを知っているから。

所属先が決まろうが決まらなかろうが、今日もどこかのグラウンドで最高のアウトプットを出すための準備をしているだろう。

 

 売れ残ろうがどんな状況だろうがイチローの牙が折れることはない。

今シーズンもアメリカという野球大国で躍動するイチローを容易に想像することができる。

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